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オリーブオイル物語-歴史や起源について-

乾季から雨季へ オリーブ収穫の喜び

1.オリーブ物語

まずはオリーブの物語から。
いつかも分からないぐらい昔に地中海東岸で生まれ、ずっと人々の生活を支えてきたオリーブオイルのお話から始めましょう!

はじまりはシリアの地から

オリーブの原種は地中海東岸ではないかと言われています。

かつての大シリア、現在レバノン、シリア、パレスチナ、ヨルダンに分割されているところ。
このエリアだと言われる所以は遺跡もさることながら、その気候ではないかと思います。

オリーブに限らず柑橘系の果物は
雨が少なく、乾いていて寒暖の差があることで果実がギュッと締まります。つまり味と風味が濃厚になるんです。なので中東の果物はとっても美味しい。さすが肥沃な三日月地帯といったところ。
要するにオリーブを育てるに最高の環境が揃っているのが中東なんです。

現在でもそうですが、かつてのシリアではほとんどのオリーブは農村で栽培され地消されていただろうと思われます。もちろん大規模に栽培して交易されていた場合もあるでしょうが、地中海で交易されたオリーブのほとんどはギリシア産だったろうと想像できるんです。その理由は…

グレキア(ギリシア)の交易品として

さて、シリア発祥のオリーブがギリシアに伝わり(おそらくフェニキア人が交易品として伝えた?)主力輸出品に育て上げます。その理由はギリシアの地形にあるんです。

ギリシアは多島海で山ばかり、平地がほとんどないので大規模に主食の穀物栽培が出来ないから。エジプトやシリア、はたまた遠方のウクライナで生産される小麦や米を輸入に頼らなければならいので代わりにオリーブオイルやワインを交易品として輸出しなければならなかったからなんです。

こうして中東の代わりにヨーロッパはオリーブオイルを産業として育成していくんです。

ユダヤ王(メシア)、油で聖別されし者

オリーブオイルは食べ物だけでなく、その用途は多岐にわたります。

交易品として運ばれ
石鹸に加工され
神殿や夜の街を灯し
そして薬としても重宝されました。
更には宗教儀式や即位の儀礼にも使われました。
そんな食べ物中々ないですよね。

みなさん「メシア」と聞けば、「イエス」を思い起こすことでしょう。
でも「メシア」はヘブライ語で「油で聖別された者」という意味でヘブライ人を救う王のことなんです。
そんなヘブライの王が即位するときに司祭がオリーブオイルを頭に掛けて聖別していたんですね。

でもその「メシア」たる「イエス」は油ではなく「水で洗礼」を受けました。ユダヤ王のシキタリがここでかわっちゃったんですね。

地中海の覇者ローマにて

ところ変わってイタリア半島では小麦農家がローマ市民として国家を建設しました。
他国との戦争を勝ち抜き半島の盟主に、遂には地中海の覇権国カルタゴと3回のポエニ戦役に勝利してアフリカに広大な農地を手に入れました。

そんな勝者ローマの市民は没落してしまったんです。
勝ったローマ市民が何故?

それは
大規模土地所有者である元老院議員がアフリカで大量に生産された安い小麦を本国に輸出したからです。
ローマ市民農家は価格競争で敗れ、土地は借金の方にとられ失業しました。対策を迫られたローマ共和国は小麦をアフリカからの輸入、自国は付加価値のあるオリーブオイルやワイン生産へと変身しました。その後、広大で手つかずの土地が残るヒスパニアでもオリーブオイル産業が元老院主導で育成されていったので、現在に続く「オリーブオイルはイタリア、スペイン」に繋がっているんですね。

日本とオリーブ

ローマの時代からぐーと時計の針を進めてみましょうか。
日本ではどういう経緯でオリーブオイル産業がはじまったのでしょうか?

明治41年
日本では魚の油漬け加工に必要なオリーブオイルの自給をはかるため、農商務省がアメリカから苗木を輸入して、三重、鹿児島、香川で栽培を始めました。不思議と香川県の小豆島だけ順調に育ち、大正時代には搾油できるだけの実が収穫されました。だから日本では小豆島なんですよ。

2.オイルが出来るまで

詳しくは【Muradoが出来るまで】を見て下さいね。
ここでは、もっと本質的なお話をします。

関連記事:Muradoが出来るまで

実から、それとも、種から

世の中には「石油」も含めて様々な油がありますが
大きな違いは何かご存じですか?

他の油は種から搾油するのに対して、(石油は別ですけどね…)
オリーブオイルだけは果実を搾油して油にします。実はここに大きな違いがあるんです。

菜種油、ヒマワリ油、大豆油、ゴマ油
全部あんなにちっちゃな種から油を搾るんです。ペットボトル1本500mlの油を搾るのにどれほどの量が必要だかみなさんご存じですか?

そう、六畳分の面積が必要なんです!
だから実は江戸時代では大分安価になったとはいえ、油は大変高価なものでした。

オリーブは果実を絞ると油が採れる唯一のもの
その量は種子油とは比べ物にはなりません。本当は一番安価で搾油しやすい油なんですよ。
油分は実に対して20~25%ほど、中東のオリーブは特に気候がら油分を多く含んでいるんです。

大昔から変わってない!

左近遺伝子組み換えやDNA編集で農産物の原種がほとんど残っていない中
オリーブは大昔からほとんど人の手が加えられていない現在では数少ない古代食でもあります。
(もちろん品種改良はされていますけどね)

だって、木になる実を採って絞るだけ。製法も基本的は変わっていないんです。
人手の石臼か自動の機械の差はありますが、搾り方は一緒。かなりレアな食べ物なんですよ。

それはつまり果実ジュース

果汁100%ジュース!
美味しいですよね。

リンゴやオレンジジュースと一緒でオリーブオイルもつまるところは果汁100%ジュースって言えますよね。
だって実を採って絞るだけ。しかもほかの柑橘系や果物と違って木に実がなる量が圧倒的に多いのでジュースだけでなく、昔はその用途は多岐に渡っていました。さすがに現代ではオリーブオイルを頭に掛けて聖別することはなくなりましたがね。

ですから
本当に自然なオリーブオイルはそのまま飲んでも美味しいんですよ!
ただ折角だから料理に使ったほうが映えますけどね。